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1問1答してみました

(質問者:東京テラス Sr.Manager Y氏)

平工さん、

普段からアユって食べますか?

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©︎ Okumura Akinori

ハハハッ、毎日たべますよ。

漁業者や釣り人の多くは獲ること自体が好きなので、鮎をあまり食べない人もけっこう多いみたいですが、僕はシーズン中は本当に毎日食べています。不思議なもので、同じ場所で鮎を獲っていても個体によって鮎の味が違うんですよね。特に、雨が降ったりして水が動くと(水位が変動すると)鮎が入れ替わるんです。つまり川を移動してるんですね。上流にのぼったり下流にくだったり、支流に入ったり本流に出たりってね。

だから毎日食べてても、この鮎は美味しいなぁ~って感じる時もあれば、この鮎は味が全然しないぞ…って時もありますね。天然遡上 と 放流されたばかりの鮎 とでは、そりゃ味が違いますからね。養殖となれば、さらに風味が変わります。

 

 

天然鮎って、次から次へとパクパクさらりと食べられるんです。身や内臓に重みがないんですよ。僕んとこの4歳の坊主は食が細いんですけど、アユは好きみたいで1歳の頃から残さず食べてくれてます。

 

 

そういえば、以前こんなことがありました。

僕、普段は他所であんまり鮎を食べないんですが、あるイベントで鮎をいただきました。パッと見た感じで養殖だなって思いました。味もそれほど期待していませんでした。でも予想とは裏腹に食べた瞬間「うまいな~」って思いましたよ。驚きました。天然鮎にないコクのような旨味があったんです。人工飼料も進化してるんですね。それでも2匹目を食べたいなとは正直思えませんでした。つまり、観光地や観光客向けの鮎 なんです。旅先で1匹たべるだけなら非常に良い鮎だと思います。僕にとっては、口にくどさが残りました。

 

また、何かの引き出物にいただいた鮎茶漬けも印象に残っています。とある県の養殖の焼き鮎をレトルトにしたものでした。金粉も添えられ、鮎も綺麗に姿焼きにされており食欲がそそられました。だし汁をかけて鮎の身をほぐし、その鮎を口に入れたのですが…。結局、飲み込むことは出来ませんでした。

 

とにかく、天然鮎と養殖鮎とでは原価で5倍とか10倍の差があります。養殖鮎を5匹とか10匹たべるのなら、ぜひ僕が獲る天然鮎を1匹でいいから食べてみて欲しいです。鮎に対する世界観が変わると思います。

 

僕は「岐阜県焼き鮎食べ比べ審査員」なども経験していますので、天然鮎の奥深さや奥ゆかしさを、常に近い距離で感じながら生きています。だからこの言葉のひとつひとつに自信をもっています。

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左列)最高値 右列)最安値

平工さん、

毎日アユは食べるのに

他所のアユは食べないってこと?

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う〜ん、食べないわけじゃないですよ。こんな背景を知ってますか?

2018年現在の養殖業界の最新技術では、オスを性転換させて、その精液をメスと掛け合わせることで子孫の90%以上をメス個体にするところまで来ています。この狙いは「子持ちアユ」の生産です。一般市場では子持ちアユ需要が大きいですからね。

 

現実として、デパートやスーパー、物産店などの店頭に並ぶ鮎商品のほぼすべてが養殖鮎でまかなわれています。養殖のほうが品質管理しやすいですもんね。

 

さっきの話の続きですが、さらに深い部分まで言うと、メスとして生まれた鮎に耐病性試験を繰り返すことで病気に強く仕上げます。そこからさらに調理の過程で添加物が加えられ、商品となり、店頭に並んで私たちの口へと入ります。

 

商品に仕上げられた鮎を食べない理由、ちょっとはわかってもらえますかね?

 

農林水産に限らずどの分野でも同じだと思います。先のケースは該当しないと思いますが、「遺伝子組み換え」とか「薬品」を連想させるモノや商品がこの世の中には溢れています。べつに悪いものばかりではないので、その良し悪しの判断は皆さんがすればいいと思います。

 

僕が天然鮎にこだわりたい理由は、こうした背景への挑戦 です。微力ですが長良川で漁を営む僕に出来ること、それは、こんな変な僕にも温かく直接お声をかけてくださる大切なお客様がいらっしゃるので、自らが自信を持って安心だと言い切れる美味しい天然鮎をご提供したい。しかも、どんなデパートや鮮魚店よりも新鮮な状態にこだりたいですね。川漁師らしく。

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